北ウイング

@askn__21

Michael Schenkerについてまとめてみる

 僕の好きなギタリストの一人にMichael Schenkerという人がいます。ScorpionsのRudolf Schenkerを兄に持ち、Scorpions、U.F.O.、MSG、その他さまざまな形態のソロバンドを股に掛け、キャッチーなリフワークと鬼気迫るギターソロで神と称されるフライングVの化身です。彼の音楽性やその歴史について、僕自身の目線でまとめてみました。

 僕が最初に神のギターに触れたのはU.F.O.時代の名盤PhenomenonのRock Bottomです。まずイントロリフに衝撃を受けました。決して速くはないのですがクール、ニヒル、無情なメロディーを、まさにこれぞUKハードロックといえるような乾いたギターサウンドで走っていきます。そしてギターソロ、二度目の衝撃です。緩やかに始まったと思えば徐々にスピードを増していき、気づいた頃にはハイスピードのギターソロが聴く者を圧倒していくのです。今となってはお馴染みのシェンカー節ソロですが、初めて聴いた時の高ぶる気分は筆舌し難いものでした。

www.youtube.com このアルバムにはもう一曲好きな曲があるのですが、それがDoctor Doctorです。イントロのもの悲しいツインギターのメロディが泣かせにきます。全体の曲調もそうですが本当に涙腺が緩むような、寂しさすら感じる一曲です。これこそがMichael Schenkerのギターソロのメロディで時たま見受けられるメランコリックさであり、Michael Amottが影響を受けた箇所ではないでしょうか。ちなみにこの曲はIron Maidenがカバーしてますが、Iron Maidenがカバーしたところで泣けるもんは泣けます。

www.youtube.com ScorpionsとしてU.F.O.の前座を経験したことをきっかけにU.F.O.のギタリストに抜擢されたMichael Schenkerでしたが、元々ドイツ人であり英語が分からなかった彼はイギリス生活の中で徐々に精神を病んでいきます。それでも精神的に不安定になればなるほどギターのサウンドが輝いていくのはさすが神といったところですが、ついに1979年のライブ盤を最後に引退してしまいます。そんな失踪説が囁かれていた彼がソロバンドMichael Schenker Groupを引き連れて返り咲いたのが1980年のデビューアルバムThe Michael Schenker Groupでした。Michael Schenkerらしさを全力で発揮しながらもバリエーション豊かな曲調で、一切捨て曲を感じません。まさにバンド名を冠するだけのことはある名刺代わりのような名盤です。

 このアルバムに関してはこの曲!っていうより全部聴いてほしいのですが、一応代表曲を載せておくとまずは一曲目のArmed And Readyです。HR/HMのお手本といっても差し支えないイントロリフやお得意のペンタソロが光る一曲なのですが、少し驚くところはUK感溢れるU.F.O.時代の楽曲とは打って変わってアメリカンな明るい曲調であるところです。もちろんU.F.O.にも明るいナンバーはありますが、それでもどことなく寂しさを感じるものでした。MSGでこれだけアメリカンに寄せられたのはボーカルGary Bardenによるところが大きいのでしょうか。

www.youtube.com 次に聴いていただきたいのは有名曲でも何でもないのですが、7曲目Looking  Out From Nowhereです。これは僕が大好きで何度も聴いていた一曲で、落ち着いたクールな雰囲気にMichael Schenker節ともいえる泣きまくりのイントロやオブリガート、ギターソロが絡みつきます。彼のギターのサウンドメイクとして特徴的なものが半踏み状態のワウなんですが、まるで人間の声のように歌うそれがこの曲でも一番の魅力として伝わってきます。僕もCry Babyをこじ開けて歯車の噛む位置を調整して彼のような音が出せないか試してました…。

www.youtube.com  Michael Schenker Groupはこの後もM.S.G.、Assault Attack、Built To Destroyとメンバーを入れ替えながらも次々に名盤を生み出していきます。特にAssault AttackはGraham Bonnetがボーカルを取っているので一聴の価値ありです。

 その後MSGはRobin McCauleyを迎えてバンド名をMcauley Schenker Groupに変更します。時代のせいもあってかこの頃からグラムメタルを少し想起させるようなビジュアルで活動していくのですが、これが新ボーカリストRobin McCauleyや付け毛でイメチェンしたMichael Schenkerに合っていてとてもかっこいいのです。Perfect Timingの一曲目Gimme Your Loveは曲自体もMVもそんな雰囲気を持った、新しいMichael Schenker像を象徴しています。

www.youtube.com またこの頃には以前の様式美HR/HMから外れた新しいバンドも増え、その影響をMichael Schenker自身も受けることになります。Save Yourself収録のタイトルトラックSave YourselfはYngwie Malmsteenの登場に衝撃を受けた彼がネオクラシカルメタルを自己流に解釈して楽曲に落とし込んだ意欲作ですが、元々神が持っていた歌謡的なソングライティングのセンスとうまくマッチしてなかなか侮れません。高校生の頃ネオクラに魅せられた僕はインギーなんてとてもじゃないけどコピーできなかったので、このSave Yourselfの方を必死にコピーしていました(笑)。

www.youtube.com  僕がMichael Schenkerに衝撃を受けた曲はまだまだありますし、ズボンのファスナーにアレを挟んで逃げだしたGraham Bonnetのエピソードや宇宙からのエナジーを吸収するエナジーチャージャーの話も書きたいところなのですが、ネットにいくらでも転がっているのでこの辺にしようと思います。今回伝えたかったことは時代によって変遷していくMichael Schenkerの音楽性の柔軟さと、その中でも変わらない強い意志を持ったリフワークと個性的なギターソロです。HR/HM全体の中では地味にも思える神の存在がどうしてここまで多大な影響を持っているのか、そして僕の今の音楽性に繋がっているのかが伝われば幸いです。